【整形外科】股関節唇損傷について

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久々に整形外科的な内容

 

今回は久々に整形外科の疾患について。

 

なるべく安定したペースで投稿したいので、詳細に語るというよりは思ったことについて書く感じでいきます。

 

そんななか今回選んだ疾患は「股関節唇損傷」

全然聞き慣れない疾患だと思いますし、罹患数もそんな多くないかと思います。

 

しかし、ここ最近指摘されることが多くなった概念として、”大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)”というものがあり、これに伴って惹起される疾患です。

 

大腿骨寛骨臼インピンジメント?!

 

さらに聞き慣れない言葉、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)とは。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FemoroAcetabular Inpingment,FAI)は、大腿骨側の形態異常と寛骨臼側の形態異常及びその両者の形態異常が存在する事により、日常生活動作における股関節の可動時に、大腿骨頭や大腿骨頸部が寛骨臼側縁に衝突を来して関節唇損傷や軟骨損傷を生じる病態である、股関節の可動域制限、決まった姿勢による疼痛の誘発、クリックなどの症状を認める。

今日の臨床サポート

 

 

簡単に言うと、

 

大腿骨か骨盤が生まれつきの形態異常があるせいで、骨同士が衝突しあって関節唇や軟骨といった組織が損傷を起こす

 

というものです。

骨形態の異常は大腿骨側だけ、寛骨臼側だけ、両方ともある方がいらっしゃいます。

 

骨形態異常をざっくり言うと

・大腿骨に関しては、頚部が盛り上がってる(CAM type)

大腿骨の骨頭から頚部への移行部は本来くびれがありますが、CAM typeでは骨性膨隆のためくびれがありません

 

・寛骨臼に関しては、大腿骨をめっちゃ覆ってる・特に前側を深く覆ってる(後捻)(Pincer type)

 

ピンサーとはカニやエビのハサミを意味します。寛骨臼に骨棘や形態異常があると過剰に大腿骨頭を覆うためインピンジメント(挟み込み)が起こります。

 

股関節痛の要因は様々であり特に高齢者でない人の痛み、スポーツ選手や若者で出る股関節痛は原因不明の股関節痛や炎症と言われていた部分もあります。

 

もちろんそういった要素はありえますが、ここ最近では鼠径部痛症候群や今回のFAIによる股関節唇損傷など、原因が判明してきた部分も出てきました。

 

 

疼痛あるけど様子見ている方はもしかしたら多いのかもしれません。

 

股関節唇損傷にかかった有名人

 

有名人でこの股関節唇損傷にかかった人がいました。

相当有名な方々がこの疾患に悩まされていたみたいです。

 

①松本人志さん

ダウンタウン松本人志、「左股関節唇損傷」手術のため1~2ヶ月の休養を発表

https://www.oricon.co.jp/news/77635/full/

 

ダウンタウンのまっちゃんこと松本人志さん、10年前に手術されてます。

 

②道端カレンさん

2018/06/20

道端カレン、股関節唇損傷で3時間半の手術

https://www.tv-asahi.co.jp/smt/f/geinou_tokuho/hot/?id=hot_20180620_170

 

道端カレンさんはトライアスロンなどをやってる際に激痛が走ったみたいです。ブログで股関節唇損傷のエピソードが詳しく書いてあり、怪我の辛さと症状の経過などは参考になる方も多いかもしれません。

 

③レディー・ガガさん

股関節手術のレディー・ガガ、米NYでステージに復帰

 

まさかのレディー・ガガ。

海外でもこの疾患に対して著名人が手術されてます。日本よりも海外の方が手術するケースは多いかもです。というのも日本で股関節鏡手術をやってる施設はそんなに多くないと思います。

 

上司に聞いたところ、海外のプロスポーツ選手では入団時にレントゲン撮ってFAIの骨形態異常があれば予防的に手術することがあるとか、、、

 

実は多いのかもしれない、股関節唇損傷

 

整形外科としてもこのFAIは比較的新しい概念であり、しっかり診断基準を学ぶ必要があります。

✔ワンポイント
日本股関節学会指針(案)FAIの診断基準
☆画像所見
・Pincer typeのインピンジメントを示唆する所見
CE角40度以上、CE角30度以上かつARO0°以下、CE角25度以上かつCross-over sign陽性
*正確なX線正面像による評価を要する。

・Cam typeのインピンジメントを示唆する所見
主項目:α角(55度以上)
副項目:Head-neck offset(8mm未満)、Pistol grip deformity、Herniation pit
(主項目を含む2項目以上の所見を要する)
*X線、CT、MRIのいずれによる評価も可。

☆身体所見(参考所見)
インピンジメントテスト陽性、Patrickテスト(FABERテスト)陽性、股関節屈曲内旋角度の低下
★診断の判定★
上記の画像所見を満たし、身体所見を参考にしながら、臨床症状(股関節痛)を有する症例をFAIと診断する。
☆除外項目
股関節疾患の既往(炎症性疾患(RA、AS、Reiter症候群、SLEなど)、切開沈着症、骨腫瘍、痛
風性関節炎、ヘモクロマトーシス、大腿骨頭壊死症、股関節周囲骨折の既往、感染や内固定材料に
起因した関節軟骨損傷、明らかな関節症性変化を有する変形性股関節症、小児期より発生した股関
節疾患(寛骨臼形成不全、大腿骨頭辷り症、ペルテス病、骨端異形成症))
http://blog.livedoor.jp/soshi_sports/archives/1862559.html

 

個人的には、

身体所見ではanterior/posterior impingement test

(anteriorは股関節を屈曲・内旋・内転、posteriorは進展・外旋・内転での疼痛誘発)

画像所見では

pincer type:cross-over sign(Xpで寛骨臼上方での前縁線-後縁線の交差)、prominence of the ischial spine (PRIS)sign(Xpで坐骨棘の突出)

cam type:pistol-grip deformity(Xpで大腿骨頭頚部移行部の膨隆)

 

このへんをまずは見るようにしてます。

 

 

治療としては

疼痛誘発肢位はとらないように指導、投薬での疼痛コントロール、リハビリで体幹や脊柱の動きの改善・臀筋郡の強化や骨盤可動性の改善

といった保存加療を3ヶ月目安でおこなう。

疼痛著明なときは関節内注射、キシロカイン5mlでの症状の確認。炎症が強いときはステロイド混注も1回はありと。

 

保存加療で改善乏しければ手術を検討。

 

※FAIによる合併症として股関節脱臼

 

文献見ると、股関節脱臼のリスクなどもあります。恐ろしい、、、

 

FAIでは屈曲・内旋位にて骨頭頚部移行部と寛骨臼辺縁が接触し、これがテコの支点となり後方へ押し込む作用が発生する。この作用が増強する事で骨折なしに脱臼を引き起こす可能性がある。

Simon D.steppacher et al:CORR, 2013

 

本来は交通事故などの高エネルギー外傷で発生する股関節脱臼ですが、国内の文献ではスポーツ関連の股関節脱臼がいくつか報告されており、自分が一番ビビったのは、ボウリングの投球動作で脱臼という報告w

 

いや怖すぎる、骨形態が違うだけでここまで色んなリスクがあるんですね。

 

無能研修医ブタ男
ヘイヘイドクター、ヘイドクター

整形外科非専門医
股関節唇損傷なるやつ、大体理学療法士〜

 

上記会話は完全に偏見ですw

 

けど医療従事者が多いという噂はあります、あとはバレエ・ダンサーなどの職種ですね。

他のスポーツだとサッカーやゴルフ、体の柔軟性が高い人・ヨガなどもリスクだそうです。

 

思い当たる方、受診を検討してみてください。

 




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