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橈骨遠位端骨折術後の合併症
今回は、
”橈骨遠位端骨折”
の合併症についてです。
先日経験した症例があったのでそれについて調べてみました。
それは橈骨遠位端骨折の手術後のことです。
外来にてその人の訴えは
”気づいたら親指があんま伸びません”
これで整形外科の方はあーと思う方多いと思います。
橈骨遠位端骨折に合併した腱断裂。
★長母指伸筋腱断裂★
ですね。
親指を伸ばすためのスジが切れたせいで伸ばせなくなったというやつ。
橈骨遠位端骨折がとにかく多い骨折なので、
これに出くわす方はそれなりにいると思います。
この疾患になったらどうすればいいのか。
この疾患に出会ったらどうすればいいのか。
今回はこの辺を探っていきます。
答えはシンプル
今回はこの答えはとてもシンプル。
手術です!!!手術しかないと言っても過言ではない!!!

そもそも長母指伸筋腱断裂(以後EPL)はどの程度おきるのか。
「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン2017」において、
腱断裂の発生率は
・EPL含む伸筋腱 0.8-4.9%
・FPLなどの屈筋腱が0.4-12%
とされてます。
また掌側プレート固定における腱断裂は
・伸筋腱断裂は手術実施症例の0-30%
・屈筋腱断裂は手術実施症例の0-9.3%
認められるそうです。
伸筋腱は特に多いですね。
ここで伸筋腱・伸筋区画についてネッター先生で確認。
長母指伸筋腱は伸筋区画の第3区画ですね。
-解剖学ネッターアトラス

この部分です。このスジ。
母指が自分で伸ばせなくなってこのスジの緊張がしっかり感じられない場合、
病院受診をするようにしてください。
原因やら予防やら
手術しかない、、、
なら避けたい!!!
そもそもなんでなるんだ!!!!
そう思いますね。
ボクもそう思います。
腱が切れてしまう理由は、完全にわかってはいないのですが、
- 折れた骨の鋭い部分
- 血流の障害
- 骨折後にできた新しい骨(仮骨)による圧迫
などが言われています。
骨折後1~3ヶ月程度経過してから切れる事が多いです1。
また手術がおこなわれた場合、骨を固定するスクリューの先端で擦り切れてしまう事も報告されています。しかし、最近はスクリューの長さに注意して手術を行うようになっており、頻度は減っていると思います。
ここのクリニックさんの説明、
非常にわかりやすいです。笑
全く知らないのですが引用させていただきました。
国内の報告など見ても同じような感じでした。
要因は、
機械的要因:転位骨片・形成された仮骨、挿入したスクリューの背側突出・ドリル操作
その他要因:浮腫や血腫、骨性圧迫による滑膜からの栄養路障害
が考えられます。
これらが複合的に関与して起こります。
手術しなくても起こりますし、
必ずしも予測や回避が可能ではないということです。
この点はしっかり説明が必要ですし、理解して貰う必要があると思います。
その上で、
じゃあどう予防するか!
ですが、
患者さんには浮腫予防の手指運動、滑液拡散を目的に特に母指の運動を徹底ですね。
Drサイドの話で言いますと、
・解剖学的整復位の獲得(保存・手術とも)
・慎重なドリル操作、スクリューの選択
ですね。
掌側プレート固定ではスクリューは実測の値より短め(-2mm)を選択するとか。
スクリュー長は掌・背側皮質骨間距離の75%以上あれば固定性に問題はないといった報告もあります。
防げない部分もありますが、
その可能性を少しでも減らすべく自身も注意していきたいと思います。
ドリルやスクリュー挿入の際に、ガ○ン汁の如く「ちょい出だなぁ」とかないように
いかがでしたか、参考になれば幸いです。
橈骨遠位端骨折の記事も良ければ。